君のいる場所


春野さんのお気に入りの本だと紹介されたのは、いつの事だったか。


近くに住んでいるのに、絶対に出会わないはずの二人がある日偶然出会って恋に落ちる。
電話番号のメモは雨に滲み、2人は再会できないまま無常に時が流れていく。
2人が出会った場所も変わっていく…街が変化していく。
その中に置き去りにされた心。

街の人ごみの中すれ違う2人。
近くにいるのに、遠い2人。

でも同じ空の下、同じ景色を見てた2人。


絵本の中の彼はバイオリンを弾く青年だったけれど、(春野さんも今回ギターに辿りつく前にバイオリンを試してみたと言っていたような)スミレ君はギターを弾く、夢を持ってNYに住んでた青年。
絵本の中の女の子は小説の翻訳をしていたけど、じゅりあは小説家を夢みてNYに住んでた女の子。


離れ離れの2人が隣の窓から聞いたのがアラベスクエチュード




春野さんの希望であろう、このミュージカル。
そしてそれを実現してくれた演出の酒井先生や音楽の先生や振付の先生や装置の方や、そしてメンバーからの愛が、優しく優しく春野さんの思いを包み込んでるみたいに温かいミュージカル。
切ないのに温かい、優しいのに少し寂しい、ミュージカル。





今絵本を読み返すと、音楽が歌声が耳の奥に蘇る。




音楽の力を歌声の力を思い知る。



1枚の絵が、1行の短い文章が、広がる。
大きく広がって心にさらに訴えかけてくる。
見過ごしてた絵の一つ一つが、息吹くように。
読み流していた言葉の一つ一つが、心の奥深くまで沁みるように。



そうそう、絵本の2人は旅立った後に再び会えるのです。

12月22日に出会って恋に落ちてから、ずっと会えなかった2人は、翌年の23日に再び会うのです。
一緒に過ごせなかったChristmasも、一緒に迎えられなかったNEWYEARも、これからはずっと一緒。