螺旋階段をのぼり(客席に背を向けた瞬間)涙を拭うリュドヴィーク。

それでもこみ上げてくる涙を何度か拭いなおしてました。



2人の見つめあう眼差しの熱…熱いなんてレベルをとうに超えてました。
お互いがお互いを捕え捕われるような、そんな視線。



魂が惹かれあう運命の恋。



そんな人に出会ったら、涙が溢れるに違いないのです。



そして。
コルベットからの贈り物をイヴェットに届けた時に
リュドヴィークがすごくすごく幸せそうに微笑んだのです。(私は初めて)



「これが本当の贈り物だったら」


贈り物だったら…
イヴェットとの束の間の幸せな一時。


この恋が忘れたくても忘れられない傷になってしまったのは
2人の恋に忘れられない程の幸せで充たされた瞬間があったから。


だからこそ2人を襲う運命の残酷さが



胸に痛い。



あの日のまま立ち止まる事を許されなかった時間の流れ。
愛し続けているのに、それすらもゆるしてくれなかった時間の流れ。


変わっていく環境。
その中で変わらざるを得ない社会での自分と
あの日のまま取り残された自分の本当の心。


胸に咲く薔薇を歌い上げた時も
確かに気持ちが通じ合ったのに。


そして声を詰まらせてリュドヴィークの名を呼ぶイヴェット。
一瞬躊躇するように立ち止まるリュドヴィーク。



愛の証だったはずの金のバラと
乾いた石のバラ。


この2人の持つバラが、2人の離れていた時間でもあるような気がしてならないのです。
乾いた土地で、リュドヴィークは変容していく思いと共にイヴェットを思い続けられた。
そしてイヴェットはあの時のまま立ち止まり、あの日のリュドヴィークを求めていたのではないかしら、と。


だからすれ違う2人。


蜃気楼のような愛。